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2016年07月10日(日)
飲み会後の交通事故に労災が適用されるでしょうか?
1 7月8日、最高裁判所が、会社の飲み会に参加したのちに交通事故に
遭った事例につき、労災の適用があり得ることを認めました。
一般的には、例えば上司に誘われて居酒屋で飲むような場合、
たとえその場で仕事上の話をしたとしても、当該飲食は、業務起因性、
業務遂行性が乏しいとして「業務上」の災害とは認められず、労災は適用
されないのが通例でした。
そのような傾向の中で示された最高裁の判断のため、マスコミ等では
「画期的な判断」といった評価もありますが、当該の「飲み会」の背景事情を
前提とした判断ですから、これを一般化することは適当ではありません。
2 では、本件判断の背景にある事実はどのようなものだったのでしょうか。
以下は、最高裁の判決理由からの抜粋です。
@ 本件「飲み会」は、その会社の中国人研修生の「歓送迎会」として
当該会社の社長の職務を代行する部長Aが発案企画し、
その費用は会社の福利厚生費から支出され、研修生の送迎も
会社の自動車を使うことが予定されていた。
A 交通事故に遭ったB以外社員7名全員が参加を予定しており、
Bは、社長に提出する資料の作成期限が歓送迎会の翌日に迫っていた
ことから参加できないことを部長Aに伝えたところ、部長AはBに対し、
「今日が最後だから・・・出てくれないか。」、「資料が完成していなければ、
歓送迎会の後、Bとともに資料を作成する。」旨を話した。
B Bは、歓送迎会が開始された後も工場で資料を作成していたが、
その作業をいったん中断し、会社所有の自動車を運転し、
工場の作業着のまま歓送迎会に参加した。その際、Bは総務部長に
歓送迎会の終了後、工場に戻り仕事をする旨を伝え、同部長もこれを
了解しており、そのため、Bは酒を進められても飲酒しなかった。
C Bは、中国人研修生を歓送迎会会場の飲食店から、宿舎のアパートに
送り返す途中で交通事故に遭ったものであるが、工場とアパートとの
位置関係からして、本件飲食店から工場に戻る経路から大きく
逸脱していない。
との事実を認定しています。
3 最高裁判所は、「本件歓送迎会が事業場外で開催され、アルコール飲料が
供されたものであり、本件研修生らをアパートまで送ることがA部長らの明示的な
指示を受けたものとは伺われないことを考慮しても」、従業員Bからすれば、
「本件歓送迎会に参加しないわけにはいかない状況にかれ、本件工場における
自己の業務を一時中断してこれに途中参加した」と認定し、
Bは、本件事故の際、「なお本件会社の支配下にあったというできである。」と
結論し、当該交通事故を「業務上の事由による災害」に該当すると認定しました。
4 本判決は、裁判官全員一致の判断であり、その結論も合理的であり、
従来の判例と比較すれば画期的なものであることは、その通りでしょう。
しかしながら、最高裁は、会社主催の「飲み会」でだからと言って
一概に「業務上の災害」にあたると判断したものではありません。
その基準は、判決理由の中でも指摘していますが、「従業員Bは、
A部長の意向等により本件歓送迎会に参加しないわけにはいかない状況に
置かれ、その結果、歓送迎会終了後に業務を再開するために工場に
戻ることを余儀なくされたものというべきであり、・・・会社から見ると
Bに対し、職務上、
上記一連の行動をとることを要請していたものと
いうことができる。」 というのです。
この下線部を付した最後の基準はかなり厳格な認定であり、会社の
飲み会が労災に該当すると認定されることは、かなりまれなケースである
という傾向は変わらないのではないでしょうか。
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遭った事例につき、労災の適用があり得ることを認めました。
一般的には、例えば上司に誘われて居酒屋で飲むような場合、
たとえその場で仕事上の話をしたとしても、当該飲食は、業務起因性、
業務遂行性が乏しいとして「業務上」の災害とは認められず、労災は適用
されないのが通例でした。
そのような傾向の中で示された最高裁の判断のため、マスコミ等では
「画期的な判断」といった評価もありますが、当該の「飲み会」の背景事情を
前提とした判断ですから、これを一般化することは適当ではありません。
2 では、本件判断の背景にある事実はどのようなものだったのでしょうか。
以下は、最高裁の判決理由からの抜粋です。
@ 本件「飲み会」は、その会社の中国人研修生の「歓送迎会」として
当該会社の社長の職務を代行する部長Aが発案企画し、
その費用は会社の福利厚生費から支出され、研修生の送迎も
会社の自動車を使うことが予定されていた。
A 交通事故に遭ったB以外社員7名全員が参加を予定しており、
Bは、社長に提出する資料の作成期限が歓送迎会の翌日に迫っていた
ことから参加できないことを部長Aに伝えたところ、部長AはBに対し、
「今日が最後だから・・・出てくれないか。」、「資料が完成していなければ、
歓送迎会の後、Bとともに資料を作成する。」旨を話した。
B Bは、歓送迎会が開始された後も工場で資料を作成していたが、
その作業をいったん中断し、会社所有の自動車を運転し、
工場の作業着のまま歓送迎会に参加した。その際、Bは総務部長に
歓送迎会の終了後、工場に戻り仕事をする旨を伝え、同部長もこれを
了解しており、そのため、Bは酒を進められても飲酒しなかった。
C Bは、中国人研修生を歓送迎会会場の飲食店から、宿舎のアパートに
送り返す途中で交通事故に遭ったものであるが、工場とアパートとの
位置関係からして、本件飲食店から工場に戻る経路から大きく
逸脱していない。
との事実を認定しています。
3 最高裁判所は、「本件歓送迎会が事業場外で開催され、アルコール飲料が
供されたものであり、本件研修生らをアパートまで送ることがA部長らの明示的な
指示を受けたものとは伺われないことを考慮しても」、従業員Bからすれば、
「本件歓送迎会に参加しないわけにはいかない状況にかれ、本件工場における
自己の業務を一時中断してこれに途中参加した」と認定し、
Bは、本件事故の際、「なお本件会社の支配下にあったというできである。」と
結論し、当該交通事故を「業務上の事由による災害」に該当すると認定しました。
4 本判決は、裁判官全員一致の判断であり、その結論も合理的であり、
従来の判例と比較すれば画期的なものであることは、その通りでしょう。
しかしながら、最高裁は、会社主催の「飲み会」でだからと言って
一概に「業務上の災害」にあたると判断したものではありません。
その基準は、判決理由の中でも指摘していますが、「従業員Bは、
A部長の意向等により本件歓送迎会に参加しないわけにはいかない状況に
置かれ、その結果、歓送迎会終了後に業務を再開するために工場に
戻ることを余儀なくされたものというべきであり、・・・会社から見ると
Bに対し、職務上、上記一連の行動をとることを要請していたものと
いうことができる。」 というのです。
この下線部を付した最後の基準はかなり厳格な認定であり、会社の
飲み会が労災に該当すると認定されることは、かなりまれなケースである
という傾向は変わらないのではないでしょうか。